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千葉地方裁判所 昭和47年(ワ)56号 判決

原告

竹内正明

ほか一名

被告

船橋市

ほか四名

主文

一  被告工藤鉄男、被告成田運送有限会社、被告藤崎孝雄および被告船橋市は、各自、原告竹内正明に対し金二二九万一八八六円およびこれに対する昭和四七年三月三日から完済に至るまで年五分の割合による金員を、原告竹内圭子に対し金一七五万四一八六円およびこれに対する昭和四七年三月三日から完済に至るまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

原告らの右被告らに対するその余の請求を棄却する。

二  被告日本通運株式会社に対する原告らの請求を棄却する。

三  訴訟費用中原告らと被告工藤鉄男、被告成田運送有限会社、被告藤崎孝雄および被告船橋市との間に生じた分はこれを五分し、その一を原告らの、その四を右被告らの負担とし、原告らと被告日本通運株式会社との間に生じた分は原告らの負担とする。

四  この判決の第一項については、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告らは各自、原告竹内正明に対し金三一二万二九一円およびこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を、原告竹内圭子に対し金二三一万二七六円およびこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

3  右1についての仮執行宣言。

二  被告ら

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生および結果

被告工藤鉄男(以下被告工藤という)は、昭和四四年二月二一日午後二時ころ、大型貨物自動車(千葉一カ七四、ダンプ以下被告車という。)を運転し、千葉県船橋市海神二丁目一二番二七号地先道路を進行中、折柄下校途中でランドセルを背負い道路左端を同方向に歩行していた訴外竹内紀幸(当時七才、小学校一年生、以下訴外紀幸という。)に被告車を接触させ、同人を被告車左後輪で轢過し、よつて同人に骨盤骨折内臓破裂の傷害を負わせ、右傷害により、同日午後四時五〇分ころ、同市宮本二丁目九番四号渡辺病院において死亡させた。

2  原告らと被告らの身分および職業

イ 原告竹内正明(以下原告正明という)は、訴外紀幸の父であり、原告竹内圭子(以下原告圭子という)は訴外紀幸の母であつた。

ロ 被告工藤は、本件事故当時被告成田運送有限会社(以下被告成田運送という)に雇傭され、自動車運転業務に服していた。

ハ 被告成田運送は、本件事故当時被告日本通運株式会社(以下被告日本通運という)船橋支店が訴外旭ガラス船橋工場より請負つた運搬作業を下請けし、被告工藤をその作業に従事せしめていた。

ニ 被告藤崎孝雄(以下被告藤崎という)は、被告成田運送の代表者であり、被告成田運送に代り事業の監督をなしていた。

ホ 被告日本通運船橋支店は、被告成田運送に、右ハ記載の運搬作業の下請けをさせ、その監督をなしていた。

ヘ 被告船橋市は、本件事故発生地である船橋市道第〇五三六号線の管理者である。

3  責任原因

イ 被告工藤

本件事故現場道路は、幅員が約三メートルの狭い市街地道路であり、被告車の幅員が二・四五メートルであるから、被告工藤は、進路の前方および左右を注視して歩行者等に危害を加えないよう運転進行すべき高度の注意義務があるのに、これを怠り、漫然進行した過失により、右道路を通行中の訴外紀幸を前記のように轢過し、よつて同人を死亡させたものであるから、民法第七〇九条の責任がある。

ロ 被告成田運送

被告成田運送は、被告車の保有者で、自己の運行に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法第三条の責任がある。

ハ 被告藤崎

被告藤崎は被告成田運送の代表者で、被告工藤の使用者である被告成田運送に代り事業の監督をなしていたものであるから、民法第七一五条第二項の責任がある。

ニ 被告日本通運

被告日本通運は、その下請人たる被告成田運送の運搬作業を監督していた元請負人であるから、民法第七一五条第二項の責任がある。

ホ 被告船橋市

被告船橋市は、本件事故の発生した道路である船橋市道第〇五三六号線の管理者であり、左記のとおり道路管理に瑕疵があつたので、国家賠償法第二条の責任がある。すなわち、被告船橋市は、

A 本件道路を昭和四一年一二月に市道第〇五三六号線として再編成したので、道路法第二八条、第四二条により備え付けを義務づけられている道路台帳に現実の道路幅員に符合した幅員を記載して、当該道路を維持管理して一般交通の安全を確保すべき義務があり、また道路法施行規則第四条の二第四項、第五項により、道路図面記載事項に変更があれば速やかにこれを訂正すべき義務があるところ、本件道路部分の幅員を道路台帳添付附属図面に四・〇五メートルと公示しておきながら、現実には三・一〇メートルの幅員しかなくなつているのに道路幅員を拡張する等の措置を講ずることを怠つており、

B 道路法第四七条により、道路の幅員、構造等の状況からして、交通の危険が発生する虞れがあるときは、その防止のため車両の通行制限、総重量の軽減、徐行等出来る限りの措置をとるべき義務があるところ、本件事故当時事故現場の道路幅員が三・一〇メートルしかなかつたのにそれに気づかず、本件道路の交通量の増加等の状況に対し何ら行政措置をなさずに安全確保を怠つていた道路管理上の過失があり、

C 車両制限令第四条(第五条の誤り)により、道路管理者が市街地区域内の道路で一方通行道路と認めて指定した道路においては、通行しうる車両の幅員は道路の幅員から一メートルを減じさらに〇・五メートルを減じたものを超えてはならないところ、本件道路を一方通行道路と指定しておきながら、本件事故当時、事故現場は三・一〇メートルの幅員しかない道路であるのに大型車通行禁止等の制限措置をとらなかつたため、現実に幅員が二・四五メートルの被告車の進行に対し、ランドセルを背負つて歩行していた訴外紀幸が被告車を避けることは不可能に近かつたもので、道路管理の上で明らかな過失がある。

4  原告らの損害

イ 原告正明

A 治療費並びに葬儀費用等 五四万七〇一五円

(a) 治療費 三万七七〇〇円

(b) 葬儀社支払金 一一万一八二〇円

(c) 葬儀費 一四万八〇〇〇円

(d) 会葬者等の接待費 二一万五六三五円

(e) 葬儀雑費 三万三八六〇円

B 訴外紀幸の逸失利益についての相続分 一八一万二七六円

(a) 訴外紀幸は、本件事故のため七才で死亡し、二〇才から六〇才まで労働可能であると思料するので、ホフマン係数は、一五・七一四二となる。

(b) 昭和四四年賃金センサス賃金構造基本統計調査統計表第一表、男子労働者学歴計によれば、従業員千人以上の企業の一八才の月収は三万四五〇〇円であり、年間の賞与等特別給与は、四万六八〇〇円であるので、平均月収は三万八四〇〇円となり、それから生計費二分の一を控除すると、年間純収入は、二三万四〇〇円となる。

(c) 従つて、訴外紀幸の逸失利益は、二三万四〇〇円に一五・七一四二を乗じた額、三六二万五五二円となり、原告正明はその二分の一に該当する一八一万二七六円を相続することとなる。

C 慰藉料 二〇〇万円

訴外紀幸固有の慰藉料について原告正明が相続すべき額を五〇万円とし、原告正明固有の慰藉料の額を一五〇万円とする。

D 弁護士費用 三〇万円

以上、原告正明の請求する損害の合計金額は、四六五万七二九一円となる。

ロ 原告圭子

A 訴外紀幸の逸失利益についての相続分一八一万二七六円右4イB記載と同旨。

B 慰藉料 二〇〇万円

訴外紀幸固有の慰藉料についての原告圭子が相続すべき額を五〇万円とし、原告圭子固有の慰藉料の額を一五〇万円とする。

以上、原告圭子の請求する損害の合計金額は、三八一万二七六円となる。

5  損害の填補

前記損害に対し、原告らは保険金として三〇三万七〇〇〇円を受領したので、これを原告正明に生じた損害中治療費に三万七〇〇〇円および慰藉料に一五〇万円を、原告圭子に生じた損害中慰藉料に一五〇万円を、それぞれ充当する。

よつて、被告らは各自、原告正明に対し金三一二万二九一円およびこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金を、原告圭子に対し金二三一万二七六円およびこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を、それぞれ支払うことを求める。

二  請求原因に対する答弁

(一)  被告工藤、被告成田運送、被告藤崎

1 請求原因1のうち、訴外紀幸が死亡した事実は認め、その余の事実は否認する。

2 同2イは知らない。同2ロないし二は認める。同2ホ、ヘは知らない。

3 同3イのうち、訴外紀幸が死亡した事実は認め、その余の事実は否認する。同3ロないしホは争う。

4 同4イ、ロは争う。

(二)  被告船橋市

1 請求原因1については、訴外紀幸が請求原因記載の日時場所において交通事故により死亡した事実は認めるが、その余の事実は知らない。

2 同2ロないしホは知らない。同2イ、ヘは認める。

3 同3イのうち、訴外紀幸が交通事故で死亡した事実は認め、その余の事実は知らない。同3ホは争う。

(同3ホに対する被告船橋市の主張)

A 道路台帳による実延長調書面から本件道路部分の幅員が四・〇五メートルと推認されるとしても、それから逆に現実の道路幅員を拡張すべき義務を負うものではなく、また道路法第四二条にいう「維持」、「修繕」には道路の拡幅行為を含まないから、同3ホAの主張は失当である。

B 同3ホBについても、道路法第四七条は、道路管理者の行政上の裁量行為を可能ならしめる根拠条文に過ぎず、本件道路については船橋市特有の道路事情を十分考慮し、一方通行規制をして一応の事故防止対策を講じていたのであるから、この点の原告の主張も失当である。

C 同3ホcについても、市道第〇五三六号線はほとんどの部分が四メートル以上の道幅であり、かかる道路の車両通行制限をすべきか否かは市民の諸利益を衡量して決する行政判断に委ねられており、また道路法第四七条と車両制限令第五条の制限は、道路管理者の具体的制限行為をまつまでもなく、運転者自身の判断で通行するか否かを決すべき事項であるから、被告船橋市には、いずれの点からも国家賠償法第二条による責任はない。

(三)  被告日本通運

1 請求原因1は知らない。

2 同2イは知らない。同2ロ、ハは認める。同2ニは知らない。同2ホは、被告日本通運が被告成田運送の監督をしていたことは否認し、その余は認める。同2ヘは知らない。

3 同3イは知らない。同3ニは争う。

4 同4イ、ロは知らない。

5 同5は知らない。

第三証拠〔略〕

理由

一  本件事故の発生および結果

訴外紀幸が死亡したことについては、原告らと被告工藤、被告成田運送、被告藤崎、被告船橋市との間に争いがない。

〔証拠略〕を総合すれば、原告主張のとおりの事故の発生および結果が認定され、この認定を覆すに足る証拠は他にない。

二  原告らと認外紀幸の身分関係

〔証拠略〕によれば、訴外紀幸は昭和三六年一一月六日生れで事故当時満七年であり、原告正明がその父であり、原告圭子がその母であつたことが認められる。

三  被告らの責任

1  〔証拠略〕によれば、本件事故現場道路は幅員が約三メートルの狭い市街地道路であるから、幅員二・四五メートルの被告車がここを通るときは、容易に歩行者に車体を接触させる危険があり、被告工藤としては進路の前方及び左右を注視して歩行者の通行をいちはやく発見し前記危険を避ける注意義務があるのにこれを怠り、漫然進行した過失により、右道路を通行中の訴外紀幸に気づかず、前記のように同人を轢過して死亡させた事実を認定することができるから、被告工藤には民法第七〇九条の責任がある。

2  本件事故当時、被告成田運送が、その被用者である被告工藤を運搬作業に従事させていたことについては、原告らと被告成田運送との間に争いがない。しかして、〔証拠略〕によれば、本件事故の加害車である大型貨物自動車(千葉一カ七四)は、被告成田運送が保有して自己の運行の用に供していたことが認められるので、被告成田運送には自動車損害賠償保障法第三条の責任がある。

3  本件事故当時、被告藤崎は被告成田運送の代表者であり、被告工藤の使用者たる被告成田運送に代り事業の監督をなしていたことは、原告らと被告藤崎との間に争いがない。従つて、被告藤崎には、被告工藤の執務中の前記不法行為について、民法第七一五条第二項の責任がある。

4  被告日本通運船橋支店が、本件事故当時、訴外旭ガラス船橋工場より請負つた運搬作業を被告成田運送に下請けさせ、被告工藤がその作業に従事していたことは、原告らと被告日本通運との間に争いがない。しかるところ、被告日本通運に対し、民法第七一五条第二項の責任を追及する原告らは、被告日本通運が右作業を指揮ないし監督していたことについての立証責任があるところ、本件全証拠はもとより、〔証拠略〕を総合しても、訴外旭ガラス船橋工場より運搬作業を請負つた元請負人である被告日本通運が、被告成田運送の作業につき指揮監督をなしていたとの事実は認められないので、被告日本通運には民法第七一五条第二項の責任はない。

5  被告船橋市が本件事故発生道路の管理者であることについては、原告らと被告船橋市との間に争いがない。〔証拠略〕によれば、被告船橋市の本件道路管理に関し、次のような事実が認められる。

〈1〉  本件事故現場付近の道路幅員は、本件事故当時、三・一〇メートルであつた。

〈2〉  本件道路は船橋市道第〇五三六号線として昭和四一年一二月に編成され、同年一〇月より一方通行道路に指定され、道路法第二八条による道路台帳が作成されていた。

〈3〉  右道路台帳添付附属図面および鉄道等との交差調書等から、本件事故現場付近の道路幅員は約四・〇五メートルあるものとされていることが推認される。

〈4〉  右幅員についての記載事項は、道路台帳作成後本件事故発生までの間に、何らの変更がない。

〈5〉  被告車(幅二・四五メートル)の通行しうる道路の幅員は、車両制限令第五条により、三・九五メートル以上でなければならず、この制限は建設省の見解では、道路管理者の具体的制限行為をまたず、各運転者に直接課せられる義務である。

〈6〉  船橋市道第〇五三六号線は、道幅が四メートル以下の部分が四メートル以上の部分の約六分の一あるが、船橋市の数少い南北に通ずる要路の一つであり、全長が約八四〇メートルある。

右認定の各事実および法令の解釈から被告船橋市の責任について判断すると、

(ⅰ) 被告船橋市は、道路法第二八条により作成した本件道路の道路台帳に、本件事故当時、本件事故現場付近の道路幅員を正確に記載していなかつたが、このことから同被告に直ちに同台帳どおりに現実の道路の拡幅をすべき義務が生ずるものではなく、またこの道路台帳の記載上に若干の過誤があつたからといつて直ちに同被告に本件事故惹起に関連する道路管理上の瑕疵責任があるものと論断することはできない。また、道路台帳作成時より本件事故発生時までに本件事故現場付近の道路幅員の記載事項に変更があつたことが認められない以上、被告船橋市に、道路法施行規則第四条の二第五項違反の責任を追及することもできない。原告の主張はむしろ、右法令違反の事実ではなく道路法第四二条遵守義務違反のみを指摘すれば足りるものと解されるが、右法条は文理上道路の拡幅行為を含むものとは解することができない。

(ⅱ) しかしながら、本件道路は、船橋市の南北を連結する数少い市街地道路であるため、交通量は比較的多かつたものと推認され、また市道第〇五三六号線の大部分が四メートル以上の幅員であり一方通行道路に指定されていたが、道路法第四七条により道路の前記幅員等の状況から車両の通行制限等の措置を講じて道路交通の安全確保をすべき義務が被告船橋市にあるものというべく、同被告が、道路幅員三・一〇メートルの本件事故現場付近について大型車の通行制限、警告等の措置を講じていなかつたのは、歩行者市民の身体生命の安全確保に考慮を欠いていたものと言わざるを得ず、また車両制限令第五条が個々の運転者に直接課せられる制限であるとしても、そのことから当然には、その制限内容について被告船橋市が顧慮せずに道路管理をしてもよいということにはならない。

従つて、被告船橋市は、本件道路の幅員、構造等の状況を勘案して大型車の通行制限等の措置を講ずるべきであつたところ、それを怠つていたため、それが本件事故発生の一要因となつたもので、同被告にはこの点において明らかに道路管理上の過失があり国家賠償法第二条の責任がある。

四  原告らの損害

1  治療費および葬儀費(原告正明分)二三万七七〇〇円

〔証拠略〕によれば、原告正明は治療費および葬儀費として五四万七〇一五円を支払つたことが認められるが、本件事故と相当因果関係に立つものは、治療費三万七七〇〇円と葬儀費のうち二〇万円とするのが相当である。

2  訴外紀幸の逸失利益

前記認定のように訴外紀幸は事故当時満七才の心身に異常のない健康な男子であつたので、本件事故によつて死亡しなければ、満二〇才に達したころ(一三年後)から満六〇才に達するころ(五三年後)までの間、就労することができ、その間、昭和四四年賃金センサス賃金構造基本統計調査統計表第一表による一八才ないし一九才の男子労働者の一カ月間の平均給与額が三万二三〇〇円であるので一カ年間の平均給与額は三八万七六〇〇円となり、それから必要生活費として、その五割を控除した、一九万三八〇〇円程度の純利益をえたであろうことが推認される。そこで右金額を基礎にしてホフマン式計算法により同人の死亡時における現価を求めると、三〇四万五三七三円となる。

(計算式 193,800×(25.535-9.821)=3,045,373)

3  慰藉料

〔証拠略〕によれば、訴外紀幸は甚大な苦痛の後に死亡したこと、又その死亡により原告正明は自らも精神的シヨツクを受けて病気になつた等の事実が認められるので、訴外紀幸の慰藉料を五〇万円とし、原告両名の慰藉料を各一五〇万円とするのを相当とすべきである。

4  相続

前記認定のように原告両名は、訴外紀幸の父母であり、訴外紀幸の損害賠償請求権を二分の一ずつ相続することとなるから、被告らに対し、原告両名は各一七七万二六八五円(逸失利益と紀幸の慰藉料との合算額の二分の一。円以下切捨。)ずつ請求することができる。

五  弁護士費用(原告正明分)

〔証拠略〕によれば、本件損害賠償請求につき被告らが任意弁済に応じないため、原告正明は本件訴訟の提起、追行を原告ら訴訟代理人に委任したことが認められ、右委任による弁護士費用は本件事故と相当因果関係があるというべく、又その費用の賠償を被告らに求むうべき額は三〇万円をもつて相当とする。

六  損益相殺

〔証拠略〕によれば、前記損害に対し自動車損害賠償保障法による責任保険から三〇三万七〇〇〇円が支払われたことが認められるから、これを原告両名の損害に二分(一五一万八五〇〇円)して充当するときは次のとおりの金額となる。

原告正明 一九九万一八八六円(治療費、葬儀費、相続分、慰藉料の合算額から右充当分を控除する。)

同圭子 一七五万四一八六円(相続分、慰藉料の合算額から右充当分を控除する。)

七  結論

被告工藤、被告成田運送、被告藤崎、被告船橋市の原告らに対する損害賠償債務はいわゆる不真正連帯債務の関係にあり、原告らの本訴請求は、被告工藤、被告成田運送、被告藤崎、被告船橋市に対し、各自原告正明に二二九万一八八六円、原告圭子に一七五万四一八六円および右それぞれに対する本件訴状が被告ら全員に到達した日の翌日であることが記録上明らかな昭和四七年三月三日以降各支払済みに至るまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は失当として棄却し、又被告日本通運に対する請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条第一項本文、仮執行の宣言につき、同法第一九六条第一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡辺桂二)

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